三寸角でつくる作業小屋

(設計:久良工務店一級建築士事務所)

農園の作業小屋の新築依頼です。大きさは間口5間奥行き2間の10坪。見習い2年目のT君が墨付けを覚えるのに丁度良い大きさということで、彼に任せることを前提に引き受けました。建築コストを下げることがいちばんの課題です。建物重量が軽いのでコンクリート基礎は打たずに石場建てとし、材料は土台を除き、大引き、柱、梁、桁、垂木、床板まですべて檜(ヒノキ)の3寸(9cm)角で計画しました。総使用本数は4m材を300本程度。一本2000円としても60万円。ガルバ波板の屋根、外壁等を含めても材料代は100万円未満です。年明けに模型作りから始めて、普段の他の仕事をこなしながら7月に棟上げを迎えました。3寸角といってもホゾ、仕口、継手はいつも通り金物は一切なしで込み栓で止め、クレーンは使わず人力の棟上げです。幸い、間違いもなく組み上がり、後日外壁を貼り、自家製の木製建具をはめ込んで無事引き渡すことができました。敷地の高低差が60㎝以上あり、高いところでは1m以上の高床式の作業小屋です。床下を風が通り抜けるせいか室内はエアコンなしでも結構快適です。野地板も外壁も安価な檜の板、期せずして総檜の小屋になりました。コスト削減のため仕上げなしの荒材のまま、内壁も無く構造むき出しのままです。時を経てどのように表情が変わってゆくのか楽しみです。(2025年)