<新築工事>

現在、木造住宅ではプレカット率が9割を超え、大工が墨をつけて手で刻む家をほとんど目にしなくなりました。プレカットの圧倒的な早さと価格を前に、多くの大工が手刻みをやめてしまった訳です。そんな中で手刻みを続ける理由を常に考えています。効率が最優先されるプレカット工場では、癖のある木ははねられて、集成材や人工乾燥材が好まれます。そして、丸太は石油を燃やして工業製品にされます。しかし、人間の都合で木の良いところだけを利用して、他は殺してしまうような木の使い方には賛同できません。やはり木は木として丸ごとそのまま使ってやるべきだと思います。

設計士の丹呉さんは「俺は、木造をやるかぎり、木に従う」と言いました。木を扱う大工であるかぎり、私も木に従いたいと思います。

木の乾燥から墨付け、刻みまで1年以上かけて棟上げとなります。

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<改築工事>

独立して間なしに新築を建ててから10年以上新築工事はなく、改築工事ばかりでした。この時期の経験は貴重でした。100年以上前の民家から近年建てられたハウスメーカーのプレファブ住宅まで、この国の住宅の変遷を大工として経験できたからです。戦後、効率重視で建てられた家は、修理しながら住み続けることを前提として作られていない。そしてその傾向はますます酷くなっているように感じます。時代が古い家ほど、余分な手が加わっていない家ほど、そして新建材が少ない家ほど改築しやすいというのが実感です。

木造住宅は比較的間取り変更がしやすいです。必要に応じて壁や柱を抜いたり、逆に耐震上必要な箇所に新たに柱や壁を作ったりもします。間取りが変わって、床が無垢の木になり、クロスの壁が木や漆喰の壁などにかわると、住環境はガラッと変わります。空き家がどんどん増える現在、中古住宅を改築して住むことに、もっと目を向けても良いと思います。

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<古家改築工事>

勿体ぶって「古民家」と呼ばずに、単に「古家」と呼びたいと思います。戦前80年以上前の家は、戦後の木造住宅とは作り方が大きく違います。基本的にその地の材料と技術、閉じた範囲で建てられています。石の上に建ち、金物はなく、木組みで組んであります。耐力壁はほとんどなく、現在の耐震基準だけで判断されると、ほぼ間違いなく解体される運命にあります。しかし、その地の木と土と竹と紙だけで作られた家には、現在の住宅にはない魅力があるのも事実です。構造材の調査をした上でですが、間取り変更や耐震補強を施して住み続けるという選択もできる可能性があります。材の傷みが激しいことも多く、手間と時間がかかりますが、新建材が使われていないので、近年の家の改築工事と比べて不思議とストレスはありません。大工にとって、昔の大工と交わる良い機会でもあります。

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<内装工事>

今の家づくりは、住宅にいかに機能を持たせるか、いかに綺麗に見せるかを競っているようです。石膏ボードや合板などの新建材は、現在の家づくりにおいて最も重要な素材になっていますが、それらに頼らず、木や土の素材を使って気持ちいの良い空間を作ることに力を注ぎます。合板が無垢の木に、施工ボード下地のクロスが土壁に変わるだけで部屋の空気がガラッと変わります。できるだけ大きなボリュウムの木や土を使いたいと思います。
コンクリートの中に木の空間を作ったり、木のプレファブを作ったりもします。マンションの1戸を木の家にすることも可能です。内装工事は構造のことを考える必要がなく、自由度が高い。どういう空間にできるか、普段とは違った楽しみがあります。

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<家具工事>

木という素材のこだわって家をつくっていると、そういう家にあう家具が、市販のものからはなかなか見つけにくいという状況があります。デザインの良い洗練されたものは確かにあるのですが、どうしてもちぐはぐした印象を受けてしまいます。原因は素材だと思います。市販の家具は合板や集成材で作られていることが多く、木の家の中におかれたとたん、すぐにそれとわかってしまいます。

大工のつくる家具、家を建てる延長上にあるそれは、決して洗練されたものではありませんが、木という素材を十分に生かしたものが作れます。家と共に長く受け継がれてゆくことを願いながら、すべてオーダーメイドでいろいろと作っています。

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<セルフビルド>

家が、つくるものではなくお金を払って買うものー消費財になってしまいました。そんな中、自分の住む家は自分で建てたい、もしくは少しでも自分も家づくりに携わりたい。そんな方も一定数おられます。プロのようには仕上がらないし、作業には途方も無い時間と根気と労力が必要ですが、それでもやりたいと言われる方の力になりたいと思います。そこに暮らしながら、不自由な部分に自分で手を加えてゆくのは楽しいものです。やみくもに完成を目指すと疲弊します。あまり細かいことにとらわれずおおらかに構えて、その過程を楽しみましょう。

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