家づくりの過程は多岐に及びます。原木の調達から製材、乾燥。木ごしらえから墨付け、刻み、そして上棟。現場に入れば、基礎、屋根、電気、水道など、工事の様々な行程でいろいろな職種の職人さん達に協力してもらいます。

<原木市場>
木が活動を生命としての活動を弱める冬場に、11月から2月頃にかけて中国山地の山間にある原木市場に足を運びます。広大な土地に何千本という丸太が所狭しと並べられています。材種や径級に応じて選別されています。100本一山のものもあれば、3本一山、1本だけのものもあります。私の場合、購入する原木の9割は杉。たまに檜、松、ごくたまに欅、楢、楠、栗など。10時からの競りに備えて現地には9時頃到着。1時間かけて購入する丸太を選びます。木の肌、節の具合、切り口の年輪などから総合的に判断して入札に臨みます。立方メートルあたりの単価で競ります。皆が欲しがる材はどんどん値が釣り上がってゆきます。逆に買い手が他にいない場合には格安で手に入ることもあります。すべての競りが終わるのは昼過ぎ頃。およそ2時間。買った丸太はそれぞれがトラックに乗せて帰ってゆきます。ひと月に3回の市が立つことを考えると、日本は森林大国であることを実感します。

<製材>
市場で購入した丸太を製材所に運び、製材してもらいます。丸太の大きさ、曲がり、節の有無などを考慮しながら、柱にするか梁にするか板にするかなどを決め、刃を入れる向きを決めて台車にセットします。なるべく無駄になる部分を少なくして歩留まりが良くなるように挽いてゆきます。木は乾燥する過程で曲がったり捻ったり収縮したりするので、実際に使用する寸法より少し大きめに挽いておきます。実際にどういう木目の材が取れるのか、色合いはどうかなど、少し博打的な要素もあり、思っていたような材が取れた時は嬉しいものです。丸太は大量の水を含んでいて非常に重たく、結構な重労働です。

<基礎工事>
スウェーデン式サウンディング試験という方法で、地盤調査を行います。100キロの錘を載せてぐりぐりと回し、何回まわってどれだけ沈んだかを測ることでその土地の地耐力を計算します。地耐力が不足していれば地盤改良工事を施した上で基礎工事を行います。鉄筋の必要量も計算して算出します。ベタ基礎には地中梁をまわして基礎の耐力を確保します。

 

<屋根工事>

 

<左官工事>
柱や梁の間に竹で小舞を編み、土を塗ります。荒壁、中塗り、仕上げ塗りの3工程。十分に乾かしてから、次の工程に移ります。40坪の家一軒に使う土の量は2tトラックでおよそ8台分。10年前程前までは地元で手配できたのですが、土屋さんの廃業が進み、少し遠くから運ばなければなっています。土壁の厚みはおよそ8センチ。断熱性能は劣りますが、蓄熱性能は高く、調湿作用も大きいため、瀬戸内の温暖な気候では、それなりに快適に過ごすことができます。ビニールで密閉された高気密高断熱の家のような温熱環境は望めませんが、梅雨時期はじめじめせず、夏はある程度の湿度を保ちます。冬は薪ストーブと併用すると、蓄熱作用で家全体が温まります。体に優しい素材です。

<板金工事>

<電気工事>

<水道工事>

<木製建具工事>
外はアルミサッシ、中は建材メーカーの作る既製品の建具が主流ですが、建具職人さんにお願いして、木で作ってもらいます。玄関戸、障子、ふすま、板戸、ガラス戸など、それぞれデザインを検討して、現場ごとに寸法を測って作ります。杉の木で作る建具はとても軽く、使いやすいものです。