モバイルハウス

2011年の震災後、坂口恭平の本を読み漁っていた時期があった。そのうちの一冊が「モバイルハウス 三万円で家をつくる」。土地の所有を基本とする社会へのアンチテーゼが主題だった。土地に定着しない家は法律上は家とみなされないため、確認申請は不要、固定資産税もかからない。駐車場1台分の場所があればOK、家ごと移動も可能。そんな自由さは、何千万円もする家を作ることに対して、大工としてずっと違和感を感じている自分に、少なくない影響を与えた。

作るにあたって、基本コンセプトは3つ。
1.2tトラックに乗せて運べる大きさ。
2.合板などの新建材は使わない。
3.どこでも手に入る、できるだけ安価な材料で。(ホームセンターで手に入れば理想的)

といっても、安かろう悪かろうではただの物置と化してしまう。居住性は確保したい。具体的には、夏は暑くなく、冬寒くない家。少なくとも今住んでいる自分の家よりは断熱性は確保したいと考えた。

2tトラックの荷台に載る最大サイズは幅1.6m*長3.5m。車載時のことを考えると高さはできるだけ抑えたいが、居住性と屋根勾配を考えて2.3mとした。材料は杉の9㎝角と杉の板材に下地材。屋根は波板、断熱材は前回の現場で余ったフォレストボード、それと住宅用アルミサッシ。材料代は約40万円。完成までかかった日数は大工3人で5日間、延15人工。(製作過程のブログ1.2.3.4.5

内部には3㎝厚の杉板を並べてベンチ、机を自由にレイアウトできるようにした。板を中段と上段に板を敷き詰めれば床と合わせて3段のベットができる。ベッドサイズは140㎝*2000㎝。6面断熱材入りの壁、窓はペアガラスとしたので、居住性はいい。設備は電気のみ。モバイルハウス自体に設けたコネクターから、コードで外部のコンセントにつないで寄生して電気を供給してもらう。トイレはなし。これも寄生する。

そうそう。そもそもがセルフビルドで素人さんが作れるようにという大きなコンセプトがあります。大した道具はいりません。必要なのは、鋸と金槌と仲間と時間と根気。あとは少しのノウハウ。参考までに、使った材料と費用、簡単な図面を載せておきます。窓や内装は自由です。参考にして是非作ってみてください。そして、こんなの作ったぞという連絡をいただけると嬉しいです。 (2018年)


モバイルハウス制作費