足場板でつくるテーブル
知り合いのセルフビルダーご夫婦のために考えたテーブルです。彼らが住む築80年超の古家には、ご自身で作った直径130センチの丸いちゃぶ台があります。それを見たご近所さんが「こんなテーブルが欲しい」。引き受けた彼らは、「これこれしかじかでテーブルを作りたので材料を分けて欲しい」と私に言ってきました。簡単な手書きのスケッチを見せてもらうと、作成にあたって検討すべき課題が数多く見つかり断念しました。脚の長いテーブルはちゃぶ台と比べると構造的にクリアすべき項目が多いのです。
彼らの手持ちの材料で、手持ちの道具で、手持ちの技術だけテーブルを作りたい。使用する材料の種類が多くなるとめんどくさい。足場板だけでテーブルを作ろう。そんなコンセプトで考え、図面を書き、彼らに送りました。しばらく経って完成写真が送られてきました。強度も問題なく、ご近所さんも大変喜んでくれたとのこと。
必要な材料は幅200ミリ厚さ30ミリ長4mの杉材4枚。ホームセンターも良いけれど、これを機に近くの材木屋さんを探して相談し、仲良くなって欲しい。必要な道具は丸ノコ、インパクトドライバー、そして少々の手道具。必要な技術は丸ノコでの材の切断とインパクトドライバーでの木ビス打ち。 図面の寸法は大まかなものなので、足場板の幅が240ミリだったり、厚みが35ミリだったりする場合は材の寸法は適当に変更すればいい。
後日、後追いで自分たちで作ってみました。作業時間はおおよそ1時間。Hさん夫婦は2日間かけて作ったとのこと。材料代は15,000円程度。以下、作業工程を写真とともに掲載します。
(1)材料となる足場板4枚。
(2)天板にする2枚を選ぶ。残り2枚で、木取り図にしたがってそれぞれの材を切断する。
(3)横桟(上)、(下)となる材を丸ノコ平行定規を使って割く。慣れないと怖い。安全第一で。
(4)割きおわった貫材。
(5)材の角のささくれでトゲが刺さりやすいので、カンナをかけて面を取っておく。全ての材料に。
(6)寸法通りに切断された材料全て。これから組み立てに入る。
(7)まず、貫2本と方杖2枚を四角く組む。貫に方杖のくる位置に墨をつけてビス止めのための下穴を開ける。
(8)100ミリの貫を貫通して方杖の小口に向かって150ミリのビスを打つ。120ミリにのビスしかない場合は30ミリ程痤堀する。50ミリ程度のビス定着長さは確保したい。
(9)長いビスを打つのは慣れないと難しいが、この真ん中の四角形がテーブルの強度を出す。
(10)脚2枚に貫の位置を出して墨をし、組み上がった貫と方杖の下に脚を2枚置き、上からビスで止める。ビスの長さは65ミリもしくは75ミリ。貫にそれぞれ2本ずつ、方杖に3本。合計7本くらい。
(11)横桟上下とも、角を落としておこう。角が当たると痛い。面取りも忘れずに。
(12)天地天地逆に起こして、横桟(下)を脚にビスで止める。2枚で60ミリの厚さなのでビスは50ミリ。3本打ち。左右とも。
(13)ひっくり返して、同じように横桟(上)を脚にビスで止める。
(14)貫の中央に位置に3本目の横桟(上)を止める。ぶらぶらだけどかまわない。天板が止まれば安定する。
(15)上下の横桟が取り付いたところ。
(16)貫と方杖を挟み込むようにして、もう一方の脚を横桟(上)(下)に止める。貫と方杖との間に隙間のないように。
(17)脚4枚まで組み上がった状態。
(18)天板1枚目。真ん中の板から外側に向かって並べてゆく。中心から外に。脳天から横桟(上)3本に向かってビス止め。75㎜2本/箇所。
(19)天板2枚目。1枚目にくっつけて脳天から横桟(上)3本に向かってビス止め。75㎜2本/箇所。
(20)天板3枚目。
(21)天板4枚目。
(22)両サイドの長さを丸ノコで切りそろえる。不揃いが良ければ必要なし。そのまま放置。
(23)木口の面を取る。
(24)完成。
屋外や作業台として使うのであれば荒材のまま。室内で使うならプレーナー仕上げ。何より、自分で作ったものは自分で治せる。自分でバラせる。自分でアレンジできる。そうは言っても、これをセルフビルドしようと思う人がどれほど存在するのか。どれほどの人が実際に完成までこぎつくのか。どうなんだろう? 所用時間1時間と2日間という、プロとアマとの圧倒的な能力の差。アマチュアはプロの10倍位以上の時間と労力が必要ということになる。セルフビルドに完成はない。作る過程そのものがセルフビルドの根幹なのだとすれば、見方を変えれば10倍楽しめるとも言えると思うのだがはたしてどうだろうか?