大島の家

(設計:すまい塾 古川設計室

瀬戸内海に浮かぶ周防大島は、歴史的に優秀な大工を数多く輩出した島です。
この家は、施主さんのおじいさんにあたる、その「長州大工」が100年前に建てたもの。家主がいなくなって雨とシロアリにやられていましたが、幸い程度は軽く、全面的に改修して再生することになりました。母屋の周りにある納屋などの付属建物を解き、隣地に新たにコンクリートで基礎を打ち、母屋を曳き家してその上にのせます。その上で、できるだけ解体した古材を使って一部増築しました。屋根も葺き替え、構造補強もおこない、間取りも変更して新しく生まれ変わりました。

真夏の暑い盛り、大工二人での人力解体から始まった工事は、翌年の年末、およそ1年4ヶ月かかって竣工しました。

古い家から学ぶことは数多くあります。最もすばらしいこと、それは人力で壊せるようにつくられていること、そしてゴミが出ないことです。土、木、紙といった、その土地の自然の素材でつくられたものは、再利用が可能で、役目が終わればその土地で土に還ります。このことは、大部分が工業製品化されてしまった現在の家とは対局にある価値です。後世につけを残さない先人の仕事ぶりに驚嘆させられました。(2009年)