坂町の古家

「気に入った古家があり、購入して、住みながら自分達で住みやすいように改修してゆきたい。大工さんの意見が聞きたい」という、若いご夫婦からの問い合わせでした。建築基準法上の接道がなく、建て替えはできない。なので広島まで20分の地の利にもかかわらず値段は格安。その分改修にお金を回せるという考えです。購入前に現地に出向き、床下の状態や雨漏りの有無、地盤調査などを行いました。築80年にもかかわらず、状態は良い。靴職人であるご夫婦、ものづくりに対する姿勢にお互い似たものを感じ、自分達で作業することを前提に、全面的な協力を約束して、購入を決めました。母屋には納屋が併設されていて、うまくすれば作業場にもできそう。簡単なスケッチは描きましたが、「あとは住みながら、走りながら考えよう。実際住んでみれば、自分達にとって必要なものとそうでないものが見えてくる。」 結局、納屋は床を張り、一部吹き抜けに。母屋の和室2部屋の畳を取っ払い、靴を作る工房に。 酷暑と厳冬に悩まされたため、次は天井に断熱材を、それと合わせてロフトの工事をと、、。住み始めて、改修しながら丸2年半。テーブルや棚も自分で作れるようになり、なかなかたくましくなりました。完成することはおそらく、ない。そもそも完成形などなく、もしあったとしてもそれは日々変わってゆくもの。(2017年〜)